Sarah Arai
新井 セラ
Work-Life Balance Consultant

株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントとして、働き方改革に取り組む企業をサポートしている新井セラさん。kuriyaのメンバーと同じように海外にルーツを持ちながら、日本社会で育つ過程で抱えた悩み、生活が大きく変わった経験を経て、多様な人がより生きやすい社会の実現を目指して活動されています。

kuriyaでは、若者一人一人の視点や意見を大切にしながら、プロジェクトマネジメントのスキルアップや、個人が抱える課題の解決をサポートする新井さん。「kuriyaのユース・スタッフのみなさんと同じように外国にルーツをもつ私だから理解できる悩みや、誰かを勇気付けるきっかけになれるかもしれない」と語る彼女が、現在の活動に込める想いとは。お話を伺います。

 

自分の人生や、やりたいことの実現を大切にしてほしい

ー新井さんは現在どのような活動をされていますか?

新井:本業はワーク・ライフバランスのコンサルタントとして、働き方改革に取り組む企業をサポートしています。従来の仕事の仕方を変えて時間あたりの生産性を向上させることで、働く時間をぎゅっと短く濃くできるようになります。人は人生の中で、生活が大きく変わる出来事や時期に直面することがあるものです。育児や病気、親の介護などで時間の制約が生まれ、それまでのように時間に頼った働き方ができなくなる人もこれから増えていきます。どんな組織にとっても、そして働く人にとっても、短い時間で成果を出していくことの重要性がこれからどんどん増していきます。

講演やコンサルティングの仕事を通して、組織や働く人が自分たちの働き方を見直し、課題解決をしていくお手伝いをしています。

ーどうして「ワーク・ライフバランス」の考えに関心を持ったのですか?

新井:私自身が、過去にライフの時間を大切にしきれなかった経験がきっかけです。20代前半で母を癌で亡くし、なぜもっと母と一緒に時間を過ごさなかったのかと後悔しました。母を亡くし、外国人の父、障害を持つ兄、そして自分自身の生活をもう一度軌道に載せようと努力する中、家族のこと、暮らしのこと、キャリアのこと、いろんな不安が一気に押し寄せて、心身ともにとても苦しい状態でした。

そんな時に、たまたま手に取った本が、当社代表の小室の著書『結果を出して定時に帰る時間術』でした。私は日本で生まれ育ちながらも、いつかは日本を脱出したい、日本で働いたり子育てをするのは嫌だと思っていました。でも、その本を読んで、自分が長時間労働の環境に対してそう感じていたと気づきました。長時間労働をやめ、みんながライフを大切にできるようになれば、日本はもっと魅力的で幸せな国になる。そうなるなら私も日本で暮らし続けたい、社会を変えたいと感じました。

ーお仕事ではどんなことを意識されていますか?

新井:家族や大切な人と過ごす時間を大切にしてほしい、自分の人生や、やりたいことの実現を大切にしてほしい、という想いです。

仕事を優先して家族の優先順位を落としてしまう人もいれば、家族を優先してキャリアを諦める人もいます。ワーク面、ライフ面においても、「本当はやりたいと思っていること」のための時間を生み出せていないと悩む人が多いです。自分や家族に何かあった時に後悔しないために、「本来やりたかったことをできている人」を増やしていきたいと思っています。

 

多様性を社会の強みにするために

ー何がきっかけでkuriyaに関わるようになりましたか?

新井:共通の友人が、代表の海老原さんを紹介してくれました。私と海老原さんは共通点も多く、すぐに意気投合したのですが、kuriyaでの活動について話を聞いて、すごく興味が湧いたんです。そこで毎週行われていたユースミーティング(多文化の若者が集まって行う企画会議)に参加させてもらいました。その後もここに集まる若者たちに少しでも役に立つことができればと、継続して参加しています。

ーkuriyaのどんなところに興味が湧いたのですか?

新井:kuriyaが大切にしている、「多様性を社会の強みにする」という考えです。本業であるワーク・ライフバランスのコンサルタントとしてのミッションとも繋がりますし、私個人のバックグラウンドと想いにも通じるものがありました。

また、多文化の若者が社会で育つ過程で抱える悩みに、同様の経験をしてきた私なら、彼らに寄り添い、勇気づけることができるかもしれないと思いました。日本生まれ日本育ちであっても、周囲からどこか「外人」と思われる。父の母国であるニュージーランドなら自分の居場所があるのかなと思いましたが、ニュージーランドに行っても「外の人」として見られました。自分がどこにも属していない。違いを特性とも価値とも感じられずに、当時は自分のアイデンティティをどう捉えていいのか悩むこともありました。

kuriyaに参加する若者たちから見たときに、成長する過程で同じ悩みを持っていた人が、社会人として日本社会に「普通に」存在する姿を見て、少しでも希望を感じてくれたらいいなと思いました。

 

若者たちが実践の中で、課題解決の力を身につけ成長している

ーkuriyaに関わられる中で、どのようなことを担当されてきましたか?

新井:私が参加し始めた2016年頃は、移民の若者や日本人の若者がチームをつくり、自ら企画したプロジェクトに取り組んでいました。毎週メンバーが集まってミーティングを開いていて、私はミーティングのファシリテーションやプロジェクトの進行管理のアドバイス、コーチング形式で一緒に考えることなどを通して、若者たちの考えを言語化し、形にしていくサポートをしました。

私はアートの分野については詳しくないので、アート系のコンテンツについては逆にみんなから学ぶことばかりです。

ーkuriyaに参加する中で印象に残った出来事はありましたか?

新井:移民の若者と日本人の若者たちで取り組んでいたある企画が、スケジュール管理やコミュニケーションの難しさでうまく進まなくなったときに、みんなで解決して乗り越えたことです。この時は、それぞれの思いが強過ぎて、このまま仲違いをしてしまうのではと心配もしましたが、「プロジェクトで何が一番大事なのか」みんなで話し合って出した結論が「楽しんでいいものを作ること」だったり、そのために「みんなの状況をシェアして、コミュニケーションを取りやすい時間や方法を見つけよう」と解決策を考えたり。若者たちが実践の中で、試行錯誤しながら課題解決の力を身につけ成長している姿を見ることができました。

ー多文化の若者を見ていて気がついたことはありますか?

新井:ふたつあります。ひとつは、移民の若者と日本人の若者が、プロジェクトの取り組みを通じて、立派なチームになったことです。それぞれの視点を大切に、丁寧にコミュニケーションを取りながら、課題を解決していく。お互いを尊重し、それぞれの強みを活かすことで、チームワークが発揮されたんだと思います。英語が話せなかった子、日本語が話せなかった子がいつの間にか互いに話せるようになっていました。プロジェクト運営を通じて信頼や絆が生まれ、言語力やコミュニケーション力が飛躍的に伸びたことにとても驚きました。

もうひとつは、若者一人一人が自分に自信を持つ様子が見えたことです。一年の振り返りで参加者に話を聞くと、自分の意見やアイデアを尊重してくれる場への安心感、プロジェクトに取り組んだ経験と学びから、自分の成長を感じられたことが自信に繋がったようでした。

 

巣立った先で自分のタンポポを咲かせ、次の種を育ててほしい

ーkuriyaを一言で表すとしたら、何を想像しますか?

新井:kuriyaのロゴのモチーフである「タンポポ」のイメージです。ここに集まった若者たちが一つ一つの種です。人や社会との繋がり、プロジェクトの実践と学び合いを通じて成長していく。タンポポから綿毛が飛んでいくように、やがては若者がそれぞれのフィールドへ巣立って、自分の強みを活かし活躍していく。その先に、自分のタンポポを咲かせて次の種を育ててほしいと思います。そうやってkuriyaの人材育成が社会に広がっていくことを願っています。

ーkuriyaは社会にどんな価値を提供できると思いますか?

新井:kuriyaは若者に限らず、多様なバックグラウンドを持つ人たちが、本音で向き合い、繋がっている場所です。どんなことに関心があって、どんなことが得意か、自分のプラスの部分をさらに伸ばしていくことを大切にしています。

日本社会では、周囲の人と違うことがマイナスに捉えられることもありますが、自分にないもの、できないことばかり気にして悩むのではなく、自分ができることや得意なことを強みとして伸ばしていく。「違いが格差ではなく、豊かさを生む社会」を目指すkuriyaの人材育成は、日本人にとっても、より生きやすい日本社会を作っていくことに繋がるのではないかと思います。

ー新井さん、ありがとうございました!

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新井 セラ(あらい せら)

一般社団法人kuriya 監事、プロボノメンバー
株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント
kuriyaではユースメンバーやスタッフを特に企画の立案段階でサポート。本業はワーク・ライフバランスのコンサルタントとして企業の働き方改革の支援をしている。仕事だけでもなく家庭だけでもなく、「心の柱になる大切な場所は複数持つ」ことをモットーに、様々な違いが多様性として組織や社会の強みになる日本を目指して日々邁進中。

▼ 株式会社ワーク・ライフバランス 新井 セラさんご紹介ページ
https://www.work-life-b.com/consultants/arai

ライター:藤 あかね
写真:樽見 星爾

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